ピアノレッスンの新しいカタチ

今回の特集記事ではモチコピアノスクールで行っているグループレッスンについてご紹介します。筆者の経歴について少し触れると、ドイツのリューベック音楽大学に4年半、オランダのアムステルダム音楽院に2年間留学しクラシックのピアノ演奏を専門に学びました。その後、福岡でピアノスクールを開講して10年程が経ちます。

音楽の原理を知って、アンサンブルを楽しんで、もっと自ら学んで欲しい。これまでのピアノレッスンの常識を捨てて、新しいレッスンをしたい。そんな思いで、一部の曜日でこれまで行ってきた個人レッスンを全廃してグループレッスンを立ち上げました。現在は小1~2、小3~4、小5~6年生の3クラスを開講しています。気づきが多く改めてピアノレッスンの楽しさと奥深さを感じています。ここからは、そのレッスン内容について具体的に見ていきましょう。

鍵盤で遊ぶことから始める

ストリートピアノを思い浮かべてみましょう。世界的に流行して駅や街角で見られるようになりましたが、日本と海外では随分と様子が異なるような気がします。海外では鍵盤を触りながらアレンジをしたり、アンサンブルや自作の曲などを弾いている姿が風景に馴染んでいるのです。日本では楽譜を立てて、スマホを設置して「いざ、演奏開始!」見事な指さばきなのですが。

もっと鍵盤を使って遊ぶ、という発想があっても良いのではと思います。アメリカ初のテクニック系の教本で「バーナムピアノテクニック」というシリーズがあります。これは楽譜がないところから発想した方がより理解がし易いのです。私たちのクラスでは最初の20分程を「創造的鍵盤遊び」と呼んでいるのですが、スケール、調関係、半音階、オクターブ、親指の移動など、様々な動きを鍵盤遊びから始めてバーナムやハノンへ繋げていく構成になっています。

音楽の喜びはアンサンブルにある

アンサンブルという言葉は耳にしたことがあると思いますが、いったいどんな意味なのでしょうか。音楽の世界では二人以上で音を奏でると、それはアンサンブルになります。一人で弾く時とは違う、調和が大切になります。実はこの感覚、ソロで演奏する場合でもあらゆる所に発揮されているのです。楽譜を見てみると、モチーフが繰り返されたり、重なったり、伴奏がついたりと音符たちは単独では存在せずそれぞれ関係性をもっている事が分かります。

例えば5つの音を並べた長音階。これを使うだけでもアンサンブルの指導が可能です。同時にユニゾンで弾く、しりとりのように音の最後から繋げていくだけでも耳を使います。他にもスリーコードでメロディーに伴奏をつけると和声の感覚も養われます。これらの指導は個人レッスンでも行うことなのですが、その場合、教師が生徒に合わせる形になってしまい、生徒側は自ら音を聴くことを止めてしまいます。アンサンブルは子供同士で組むとその指導効果がより発揮されます。

グループの中で見えてくる個性

お友達が弾いていると一緒にドレミで歌ったり、楽譜を指して「ここからだよ」と声をかけたり。子供達の様子を見ていると、マンツーマンの時とは違った意外な一面に気づかされます。クラスはおよそ二学年ごとに分かれており、生徒の進度はまちまちです。これをネガティブに考えるか、逆にポジティブに捉えるのか、教師の力量が問われるところ。少し話を広げると、学校教育では教わった事を覚えてテストで答える、といった形式の学習が一般的でしたが、近年はグローバル教育の観点から見直しの声が高まっているのは周知の通りです。ピアノのレッスンでは個人指導による安心感は確かに根強くあると思います。しかし、少し乱暴な言い方にはなりますが「何でも先生に教えてもらう」というのは甘え過ぎです。グループレッスンでは時に子供達の間で教えあったり、お友達が習っている事を見聞きして予習、復習をすることでレッスン時間の中に気づきが多く転がっています。グループレッスンを受講する生徒達は、その気づきの種のようなものを「あっ、こういう事だったのか」と拾い集めながら、お互いに個性を伸ばしていくことになります。

読譜力がピアノ上達のカギ

机に向かって何やら書いている子供達。そう、彼らは楽譜を書いています。生徒それぞれにレパートリーとして取り組んでいる曲があります。その曲を全員で聴音して書き取っているのです。鼻歌を歌いながら「う~ん、何の音かな」「頭の中が音符だらけになってきたよ」と難しい顔をしながら頑張っています。

「ピアノを習っているけど楽譜が読めない」と思ったことはありませんか。その通りで、楽譜を読むのは外国語を一つ習得するようなもの。簡単ではありません。毎日の練習がなければ、いつまで経っても読めないままなのです。レッスンの仕方にも問題があります。一般的なピアノのレッスンでは曲を覚えることに重きを置きます。

「覚えた曲なのに、すっかり忘れてしまった」と思ったことはありませんか。これも、楽譜を根本的に理解していないことが原因です。私たちのこれまで行ってきた個人レッスンにはソルフェージュ指導を組み込んできましたが、それでも十分ではありません。単純に時間が短すぎるという問題があります。この課題に対して50分のグループという形をとり、その内20分以上を聴音を主体としたソルフェージュに割り当てることにしました。個人レッスンとの最大の違いは音を聴いて楽譜を書くことからアプローチする点です。そうすることで、嫌でも楽譜に慣れることになります。楽譜はただ音符が散らばっている紙ではなく、リズム、メロディー、ハーモニーの要素があり、アンサンブルの面白さを示した「ありがたい本」に姿を変えます。レッスンの始めに取り組んでいる鍵盤遊びも「楽譜にするとこうなるんだ」と理解するようになるでしょう。

いかがでしたか。ピアノレッスンの常識を覆すチャレンジはまだ始まったばかりですが、より楽しく、より自由に子供達と頑張ります。グループレッスンの受講にご興味のある方はお問合せ下さい。