アムステルダム国立美術館に所蔵されているフェルメールの有名な「ラブ・レター」という絵です。リュートを弾いている女性が、背後に立っているもう一人の女性から手紙を受け取った場面を描いています。さりげない生活の一コマですが、この女性の表情からは手紙の送り主が誰なのか、どのような気持ちで手紙を受け取ったのか、想像が膨らみますよね。この時代のオランダは30年戦争の後、独立と宗教の自由を勝ち取り経済的にも大きく発展しました。その結果、裕福な商家等では楽器に親しむ人々も増えていったのです。音楽の年表で重ねると、バロック中期頃にあたります。J.S.バッハが活躍する前、ドイツのお隣の国オランダでのお話です。
ピアノを習ってきた人にとって、バッハは原点という漠然としたイメージがあると思いますが、バロックという大きな流れの中では終着点でもあります。バッハが誕生する以前のヨーロッパ各地に目を向けると、実は多くの作曲家達が足跡を残している事が分かります。この絵からは市民の生活に音楽が入ってきた様子が感じ取れますね。世界史と音楽の関係は面白いです。年内にあと一回「音楽の話」のイベントを計画していますが、その時はもう一度バロック時代の音楽について深堀したいと思います。