今やクラシック音楽は世界の海を渡り、新しい土地でその地域の文化と溶け合って生きています。今夜の主役である2人のバイオリニストは実に国際的な経歴の持ち主です。アレクサンドル先生はロシアに生まれ育った真のヴィルトゥオーゾ。確固たるロシアメソードの技術を携え、ヴィヴァルディからポップミュージックまで幅広いレパートリーを有し、とにかく「お客さんを楽しませる」ことが大好きな人柄。数十年前にシンガポールフィルのコンサートマスターとして招聘され、以来クラシックの文化を南国の地に芽吹かせた偉大な立役者でもあります。まさこ先生は日本からロンドン、そしてシンガポールへと国際的なキャリアを歩まれ、バイオリンスクールを運営されています。アレクサンドル先生とは長きに渡り最高の音楽パートナーなのです。
艶やかで奔放なアレクサンドル先生の音楽を、まさこ先生が引き立てる絶妙のアンサンブルスタイルです。シンガポールでクラシック音楽を聴くと「組み合わせ」「融合」「文化の交差」といったキーワードが、ぼんやり浮かびます。 留学すること、アンサンブルすること、移住して音楽家として土地に同化していくこと。食文化と同じように、音楽も様々な文化と溶け合って生きているのです。会場のヴィクトリアホールはイギリス植民地時代のコロニアル様式を残しつつ全面改修を終えたばかり。豪奢で都会的な雰囲気をまとった素晴らしいホールでした。ホールがある文化エリアのすぐ隣には世界有数の金融街が広がっております。何とも贅沢な夜景です。