ショパンコンクール in アジアの課題曲について少し解説してみます。3〜4年生部門ではショパンの子犬のワルツop.64-1がリストに入っています。子犬のワルツは手が小さくても上手く弾けますし、ショパンらしいエレガントな表現を学ぶのに適した課題です。技術面では特に右手の俊敏さと左手の伴奏法が鍛えられます。技巧的で聴き映えするという点でモシュコフスキーの「タランテラ」も良いと思います。楽譜を見てみましょう。
冒頭にPrestoと書いてある通り、かなりアップテンポです。手拍子を打つとしたら、2拍子ではもたつきますので、小節ごと1拍になります。アップテンポに自信がなければ、この曲は避けた方が賢明です。速く、con fouco 火のように。スタッカートが書かれている8分音符は短く強く打鍵します。半音階の8分音符がビートを刻んでリズムを引き締めます。最初は丁寧にゆっくり練習しましょう。右手の連打は詰まらないよう指先で速くはじきます。(鍵盤の戻りが悪いと弾きにくいです。)5と7小節にはドミナントのコードがみられます。アクセントペダルと併せて V-I-V-I の和声進行を上手く出して下さい。ペダルは打鍵と同時に踏むアクセントペダルを用います。急速なパッセージのベースによく使う方法です。譜例にはありませんが17小節目以降はシンコペーションのリズムが入ったメロディー、33小節目以降はffにアクセントのついた強烈なパートが出てきます。65小節目以降の中間部はテンポを保ったまま、いたずらっぽいニュアンスに変わります。曲を通して非常に明瞭なタッチで、次々に技を繰り出していくように仕上げて下さい。タランテラはイタリア発祥の舞曲。8分音符の連続からはイタリアらしいはっきりとした言葉の発音が感じられます。まくし立てるように速く。そんな、挑発的なところもタランテラの魅力です。