20世紀前半にベルギーで活躍した作曲家、ジャン・アプシル。「小さな羊飼い」は8分の6拍子のバルカローレ風の曲で、フランス風の色彩豊かな性格が特徴です。冒頭の左手は5度と長3度が交互にゆらゆら響いて、サティを思わせます。アンニュイな感じで良いです。「リズム」は音楽の根底に流れる大切な要素ですが、ゆるやかな8分の6拍子は小さな子供には理解しにくいようで、例えばブルグミュラーの「牧歌」や「舟歌」も同じ8分の6拍子。大きく揺れる2拍子と脈打つような6つの8分音符を感じられたら気持ちよく曲が流れるのですが、どうもこれが難しいのです。Preの指導では、最初は軽快な2分の2拍子の曲をよく取り上げています。ベートーヴェンの「エコセイズ」やシューマンの「兵士の曲」など。みんな大好きで、ピアノが聴こえてきた瞬間にノリノリで足踏みします。2分の2拍子はとても原始的なリズムなので分かり易いのでしょう。
そんな大切なリズム感に注目して、ジャン・アプシルは教育用のピアノ曲をたくさん書いています。彼の語法には同年代のサティやフランス六人組あたりの作曲家と通じるところが多くみられ、リズムを鍛えるだけではなく、フランス的な色彩豊かな響きにも気軽に触れられるのでお勧めです。